8月 [私のなかのクリスチャン・トルチュ]
 
私が最も好きな、パリ6区オデオン交差点に面した花屋クリスチャン・トルチュが、どうやらその役目を20年で終えるらしい。むろん、好きな花屋がなくなるのは寂しい気持ちですが、誤解を恐れずに申せば「やっと終わったか」という気持ちがあります。
 
クリスチャン・トルチュを知ったのは1989年頃の雑誌の紹介記事です。1種類の白い花に幾種もの葉が混ざりあったあスパイラルブーケはもとより、すべてにおいて衝撃でした。
 
ところが残念なことに、私を含め世界中の花好きが彼の店に押しかけてしまったことで、店の雰囲気もスタッフが作るブーケの雰囲気もこの20年で随分と変わりました。たとえば、カール・フュシュが今でもしっかり受け継いでいる、あの洗練された田舎臭い雰囲気は1998年頃から薄れていたのです。

でも私は思います。クリスチャン・トルチュは、きっと静かな場所で、今度は小さな花屋を始めるにちがいない。なぜなら彼が作るブーケだけはこの20年、変わっていないのですから。